用語集

アルファ線(α線)

アルファ線は、放射線の一種で、陽子2個と中性子2個からなるヘリウムの原子核と同じ構造の粒子である。 物質を通り抜ける力は弱く、激突した相手を電離する能力が高いため、自分の持つエネルギーを急速に失ない 空気中では数センチメートルしか進めず、紙一枚程度で止めることができる。 アルファ線を人体外部で受けた場合、アルファ線は皮膚の表面で止まってしまうため、人体への影響はほとんどない。 しかし体内にアルファ線を放出する放射性物質を接取した場合、その物質の沈着した組織の細胞が集中してアルファ線の 全エネルギーを受けるため人体が受ける影響が大きい。

安定ヨウ素剤(ヨウ素剤)

放射性ではないヨウ素をヨウ化カリウムの形で製剤したもの。 ヨウ素は、甲状腺ホルモンの構成成分として必須の微量元素である。甲状腺にはヨウ素を取込み蓄積し、 それを用いてホルモンを合成するという機能があるため、原子力発電所等の事故で環境中に放出された 放射性ヨウ素が呼吸や飲食により体内に吸収されると、甲状腺に濃集し、甲状腺組織内で一定期間放射線を 放出し続ける。その結果甲状腺障害が起こり、比較的低い線領域では甲状腺がんを、高線量では甲状腺機能低下症を引起こす。 これらの障害を防ぐために、放射性ヨウ素を取込む前に甲状腺をヨウ素で飽和しておくのが安定ヨウ素剤服用の目的である。 安定ヨウ素剤の結果は投与時期に大きく依存し、放射性ヨウ素吸入直前の投与が最も効果が大きい。また、安定ヨウ素剤は 放射性ヨウ素の摂取による内部被ばくの低減に関してのみ効果がある。

宇宙線

宇宙(銀河系や太陽など)から地球上に降り注いでいる放射線を宇宙線という。 宇宙線は大部分が陽子と若干のヘリウムイオン及び重粒子のイオンからなる。 この宇宙線が大気圏に突入し、大気中の酸素、窒素、炭素などの原子核と反応し、ミューオン(素粒子)や中性子などの 二次宇宙線を作る。これがさらに空気中の物質と核反応して、トリチウム、炭素-14、ベリリウム-7、などの放射性物質を生成する。 宇宙線の両(強さ)は、緯度や海抜(高度)によって異なり、高度が高くなると増加する。 国連科学委員会(2000年報告)によると、宇宙線によって私たちが1年間に受ける放射線量は、世界平均で、約0.4ミリシーベルトである。

運用上の介入レベル(OIL)

OIL(Operational Intervenition Level)とは、防護措置導入の判断に用いられる測定器による測定値などより求めたレベルをいう。 OILは、事故の態様、放出放射性核種の別、気象条件、被ばくの経路(外部吸入、接取)等を仮定して、包括的判断基準 (個々の防護措置の実施によって予想される線量あるいは既に受けてしまった線量によって表される判断基準) に相当する計測可能な値として導き出される。OILとしては、空間線量率、表面汚染密度、空気中放射性物質濃度など様々な値 が考えられる。

エックス線(X線)

透過力(物質を透過する能力)の大きい電磁波(光の一種)で、通常、タングステンに高速の電子を打ち込んで発生させる。 エックス線(X線)はレントゲン線とも呼ばれ、1895年にドイツの物理学者ウィルヘルム・レントゲンにより発見された。 レントゲンはこの見えない放射線を未知の意味からエックス線(X線)と名づけた。

屋内退避

原子力災害時に、一般公衆が放射線被ばく及び放射性物質の吸入を低減するため家屋内に退避することをいう。 屋内退避は、通常の生活行動に近いこと、その後の対応指示も含めて広報連絡が容易である等の利点があると同時に、 建家の有する遮へい効果及び気密性等を考慮すれば防護対策上有効な方法である。 特に予測線量が大きくない場合には、住民の動揺、混乱等をもたらすおそれの高い避難措置よりも優先して考える べきものであるが、長期的には避難を考慮する必要がある。

外部被ばく

人体が放射線を受けることを放射線被ばくといい、放射線を体の外から受けることを外部被ばくという。 外部被ばくの例として、レントゲン撮影のときX線を受けることがあげられる。 また、地球上の生物は宇宙線や、大地からの放射線により日常的に外部被ばくをしている。 外部被ばくを起こす主な放射線はガンマ線、X線、ベータ線及び中性子線である。

確定的影響

ある一定の放射線量(これをしきい値という)を超える被爆をした場合にだけ現れ、受けた放射線の量に依存して症状が 重くなるような影響。大量の放射線を受けた結果多数の細胞死が起きたことが原因と考えられる。 症状の現れ方には個人差があるが、ほぼ同じ程度の線量の放射線を受けた人には、同じような症状が現れる。 確定的影響には、急性の骨髄障害、胎児発生への影響(精神遅延、小頭症)、白内障などが含まれる。 「確定的影響」の項を参照

確率的影響

放射線被ばくによる単一の細胞の変化が原因となり、受けた放射線の量に比例して障害発症の確立が増えるような影響で しきい値がないと仮定されている。がんと遺伝性影響が含まれる。放射線によってDNAに異常(突然変異)が起こることが 原因と考えられている。 「確定的影響」の項を参照

ガンマ線(γ線)

原子核の壊変によって原子核から放出される電磁波をガンマ線という。不安定な原子核がアルファ線やベータ線を放出した後に、 さらにガンマ線を放出してより安定な原子核に移行する。 ガンマ線は物質を透過する力がアルファ線やベータ線に比べて強く、遮へいをするには、厚い鉛版やコンクリート壁が必要である。

緊急防護措置を準備する区域(UPZ)

UPZ(Urgent Protective Action Planning Zone)とは、国際基準等に従って、確率的影響を実行可能な限り回避するため、 環境モニタリング等の結果を踏まえた運用上の介入レベル(OIL)、緊急時活動レベル(EAL)等に基づき、避難、屋内退避、 安定ヨウ素剤の予防服用等を準備する区域をいう。実用原子力発電所の場合、この区域の範囲のめやすは「原子力施設から概ね30km」とされる。

空間放射線量率

対象とする空間の単位時間当たりの放射線量を空間放射線量率という。 放射線の量を物質が放射線から吸収したエネルギー量で測定する場合、線量率の単位は、Gy/h(グレイ/時)で表す。 空気吸収線量率ともいい、表示単位は一般的にnGy/h(ナノグレイ/時)及びμSv/h(マイクロシーベルト/時)である。 原子力発電所等の原子力施設では、周辺環境の安全を確かめるため、モニタリングステーション及びモニタリングホストを 施設周辺に設置し、環境中の空間放射線量率を連続して測定している。

グレイ(Gy)

放射線をある物体にあてた場合、その物体が吸収した放射線のエネルギー量を吸収線量とよび、単位としてグレイ(Gy) が用いられる。1グレイは、放射線を受けた物体1キログラムあたり1ジュールのエネルギーを吸収したことに相当する。 この単位は放射線や物質の種類によらず適用されるもので、放射線が物質(人体を含む)に与える影響を評価するときの 基本的な物差しになる。

シーベルト(Sv)

シーベルト(Sv)は、被ばくによる確率的影響(がん、遺伝性影響など)の生じるリスクを推定するための尺度となる線量 (等価線量及び実効線量)の単位である。等価線量は各組織・臓器の吸収線量(Gy)に放射線の種類及びエネルギーによる 確率的影響の差を補正する放射線荷重係数を乗じて求められ、実効線量は各臓器・組織の等価線量

しきい値

一般的にある値以上で影響が現れ、それ以下では影響がない境界の値をしきい値という。放射線影響の分野では、 皮膚の紅斑、脱毛、不妊など、放射線の確定的影響には、それらの影響が現れる最小の線量が存在する。 これをしきい値という。「確定的影響」の項を参照

自然放射線

生活環境には自然放射線と人工放射線があり、我々は常に放射線を受けている。人類は、地球誕生以来、地球上の残存している 放射性物質からの放射線や、宇宙から地球上に降り注いでいる放射線(宇宙線)を受けてきたが、これら自然界に存在する 放射線を自然放射線という。

実効線量

被ばくによる確率的影響(がん、遺伝性影響など)は、各臓器・組織によって影響の生じる度合いは異なる。 この組織・臓器ごとに異なった影響を、全身が均等に被ばくした場合と共通の尺度で表した線量が実効線量である。 実効線量は単位にはシーベルト(Sv)が用いられる。 実効線量は、生物学的な効果を考慮した値であり、各臓器・組織の等価線量に各臓器・組織の組織荷重係数を乗じ、 それらを総和したもので求められる。 この実効線量により、放射線による確率的影響を、外部被ばくと内部被ばくを合算して評価できる。

遮へい

放射線源(放射性物質)から放出される各種の放射線を遮り、透過してくる放射線の量を少なくすることを遮へいといい、 放射線を遮る目的で放射線源と人体との間に設ける部材を遮へい材という。遮へい材としては、ガンマ線(γ線) に対しては鉄、鉛やコンクリートが、中性子線に対しては水、パラフィンやコンクリートが有効である。

除染

汚染の原因となっている放射性物質が除染処理によって除去される程度を示す指標である。 通常、除染処理前の放射能濃度を処理後の放射能濃度で割った値で表す。 除染係数が大きいほど汚染物質が取り除かれる量が多いことを意味する。

等価線量

等価線量は、人体の各組織・臓器の確定的影響が発生しないしきい値未満の被ばくによる確率的影響の 指標になる線量である。確率的影響の発生確率は、放射線の種類やエネルギーにより異なるため、 放射線の種類・エネルギーによる違いを補正する放射線荷重係数を、組織・臓器の吸収線量に乗じて求めることができ、 各組織・臓器の確率的影響を全ての放射線に対して、共通の尺度で評価することができる。 単位にはシーベルト(Sv)が用いられる。

内部被ばく

人体が放射線を受けることを放射線被ばくといい、身体内に取込んだ放射性物質の起因する特定臓器・ 組織の被ばくを内部被ばくという。放射性物質を体内に取込む経路には、放射性物質を含む空気、水、 食物などの吸入接取、経口摂取、経度吸収がある。

避難

避難は、原子力施設から放射性物質の異常な放出が発生した場合に、周辺住民等の 放射性プルームからの被ばくをできるだけ低減させるために実施する防護対策のうちの一つであり、 避難が実施された場合、周辺住民等は地方公共団体が放射性プルームに遭遇す場所から離れた地区に 開設した避難施設へ避難することになる。 避難は、放射性物質の大量の放出前に実施することが可能な場合には、被ばくの低減化の効果が 最も大きい防護対策である。また、原子力施設から直接放出される中性子線及びガンマ線の 影響が大きい場合においても、避難が検討される。

被ばく

人体が放射線を受けることを被ばくという。その受け方によって外部被ばくと内部被ばくに分けられる。

ベータ線

ベータ線は原子核の壊変にともなって、原子核から飛び出す電子のことで、 マイナスの電荷を持っているものと、プラスの電荷を持っているものがある。 ベータ線の物質を透過する力はアルファ線より大きいが、ガンマ線より小さく、 厚さ数mmのアルミニウムやプラスチックで止めることができる。

放射性同位元素(Rl)

放射性同位体ともいう。同じ原子番号(陽子の数)を持つ原子間で質量数が異なる原子を お互いに同位体という。同位体には、安定な同位体と不安定な同位体がある。 このうち、不安定な同位体はより安定な同位体になろうとして、アルファ線(α線)、 ベータ線(β線)、ガンマ線(γ線)等の放射線を放出する。 放射線を放出する同位体を放射性同位体といい、ラジオアイソトープ(Rl)とも呼ばれる。 放射性同位体には、トリチウム(水素3)、炭素14、カリウム-40など約2500種類がある。

放射性物資

放射線を出す能力を放射能といい、放射能を持っている原子(放射性核種という) を含む物質を一般的に放射性物質という。また、個々の各種を限定しない場合は、 放射性核種のことを総称して放射性物質ということもある。 放射性物質、放射線及び放射能の関係は、「電灯」が放射性物質に、電灯から出る「光線」が 放射線に、そして電灯の「光を出す能力」と「その強さ(カンデラ)」が放射能にあたる。

放射性プルーム(放射性雲)

気体状(ガス状あるいは粒子状)の放射性物質が大気とともに煙突からの煙のように流れる状態を 放射性プルームという。放射性プルームには放射性希ガス、放射性ヨウ素、ウラン、プルトニウム などが含まれ、外部被ばくや内部被ばくの原因となる。放射性希ガスは、地面に沈着せず、 呼吸により体内に取込まれても体内に留まることはないが、放射性プルームが上空を通過中に、 この中の放射性物質から出される放射線を受ける(外部被ばく)。放射性ヨウ素などは、 放射性プルームが通過する間に地表面などに沈着するため、通過後も沈着した放射性ヨウ素などを 直接吸入すること及び放射性ヨウ素などの沈着により汚染した飲料水や食物を摂取することによっても 放射性ヨウ素などを体内に取込むことになり、体内に取込んだ放射性物質から放射線を受ける(内部被ばく)。

放射線

ウランなど、原子核が不安定で壊れやすい元素から放出される高速の粒子(アルファ粒子、ベータ粒子など) や高いエネルギーを持った電磁波(ガンマ線)、加速器などで人工的に作り出されたエックス線、電子線、 中性子線、陽子線、重粒子線などのこと。

放射能

不安定な原子核は放射線を放出してより安定な原子核に変わる。この時、原子核から放出される 放射線の種類には、アルファ線(α線)、ベータ(β線)、ガンマ線(γ線)などがある。 原子核が放射線を出す能力を放射能という。放射能の単位はベクレル(Bq)で表される。

モニタリングポスト

放射線を定期的に、または連続的に監視測定することをモニタリングといい、 原子力発電所等の周辺でモニタリングを行うために設置された装置を モニタリングポストという。 環境の放射線量率の測定は、通常、ガンマ線を対象に行われ、検出器としてガンマ線に感度のよい、 蛍光作用を利用した「シンチレーション検出器」や電離作用を利用した「電離箱式検出器」がよく用いられる。 これらの測定器は、平常時の放射線レベルから緊急事態全般に渡る広範囲の放射線の変動を欠かすことなく 連続測定監視できるようになっている。一部の地域では、中性子線の検出もできるようになっている。

予防的防護措置を準備する区域(PAZ)

PAZ(Precautionary Action Zone)とは、急速に進展する事故を考慮し、 重篤な確定的影響等を回避するため、緊急事態区分に基づき、直ちに非難を実施するなど、 放射性物質の環境への放出前の予防的防護措置(避難等)を準備する区域をいう。 実用原子力発電所の場合、この区域の範囲のめやすは「原子力施設から概ね5km」とされる。

臨界

核燃料物質は、核分裂性物質の量、形状、中性子に対する条件が整うと、核分裂の連鎖反応がおこる。 この核分裂による連鎖反応が継続している状態を臨界状態にあるという。 核燃料物質は中性子が当たると核分裂を起こす性質があり、核分裂に伴って2~3個の新たな中性子が発生する。 この中性子が別の核燃料物質に当たり、次々に核分裂を起こすが、臨界状態では核分裂によって発生する 中性子数と核燃料物質等に吸収されたりして消失する中性子数が均衡状態となる。 原子炉では、制御棒等によって中性子数を制御しているが、制御棒を徐々に引き抜いて行き 連鎖反応が維持される状態を臨界に達したという。 一方、核燃料施設では、臨界がおこらないように、核燃料物質の取扱い量を制限したり容器等の 形状を工夫し臨界管理を行っている。

出典:「原子力防災基礎用語集-2013年-」 公益財団法人 原子力安全技術センター